RTVのビジョン、IPネットワークを通じた日本のライブスポーツストリーミングに革命をもたらす
このケーススタディでは、RTVの代表である須澤颯太氏に、NETGEAR AV製品のメリットと、オンラインライブストリーミングにおけるAV over IPの現状および将来のビジョンについてお聞きしました。

会社名: RTV
業種: Broadcasting
所在地: 日本・大阪
企業サイト: rtv.co.jp/
日本でライブスポーツといえば、多くの人がテレビ局で放送される野球やサッカー、ゴルフ、駅伝(日本の長距離リレー)などのメジャースポーツを思い浮かべます。しかし現在では、大阪に拠点を置くRTVのおかげで、さまざまなスポーツ大会をオンラインでライブ視聴できるようになりました。RTVはライブ配信制作に加え、動画配信コンサルティングや配信メディアの運営、人材育成など幅広い業務を手掛けています。
2023年、RTVは大阪本社内に、Panasonic Connect製KAIROS IPプロダクションスイッチャーを中心としたリモートプロダクション用の副調整室を構築しました。SMPTE ST 2110をはじめとする各種信号の伝送と精密なタイミングの維持には、NETGEAR製フルマネージドスイッチ「M4350-16V4C」が採用されています。
RTV代表取締役の洲澤壮太氏に、NETGEAR製品の利点や、オンラインライブ配信におけるAV over IPの現状と今後の展望について伺いました。
多様なプロトコルが混在する中でRTVが目指すもの
NETGEAR: まず、RTVの事業内容について教えてください。
洲澤氏: アメリカンフットボールやラクロスについて、競技連盟・協会と一緒にプロフェッショナルな配信サービスを運営しています。そのほか、地上波では放送されないスポーツに特化した配信メディアや、バスフィッシング(日本の釣り)のライブ配信サービスの運営も行っています。
こうした活動を通じて、ライブ配信技術やさまざまなアイデアを掛け合わせ、マイナースポーツや地域スポーツの新たなファンを生み出すことを目指しています。
N: RTVのシステムは、コンパクトな構成でAV over IPの良さを引き出しています。構築の中でどのような気づきがありましたか。
S: スマートプロダクションとリモートプロダクションを分けて取り組んでいます。スマートプロダクションでは、Vizrt(旧NewTek)TriCasterやBlackmagic Designの機器を使用しています。放送用機器に比べて安価ですが、それらを使って高品質な映像を制作できることが当社の強みです。
2023年にはリモートプロダクションシステムも整備し、システムインテグレーターのアシラックさんに依頼して、KAIROSを中心としたサブシステムを構築してもらいました。
目的は2つあります。1つは配信本数を増やすことです。マイナーやローカルスポーツの配信は、テレビ放送のように1本ずつ高品質で制作するよりも、一定のクオリティを保ちながら低価格でできるだけ多く配信した方が、ユーザビリティは高いと感じています。
もう1つはニーズの変化です。以前は「ひとまずYouTubeで配信してみよう」といったライブ配信が多かったのですが、最近はマネタイズのニーズが高まっています。こうした状況の中で、配信の安定性確保やトラブル対応に集中できるシステムが必要になってきました。そのことを踏まえ、副調整室を構築しました。
N: 現場でのオンサイト制作と比べて、リモートプロダクションならではのメリットがあるということでしょうか。
S: 例えばゴルフ中継は非常にコストがかかります。アマチュアや小中学生のゴルフ大会は観客こそ多くありませんが、それでもコンテンツとしてのニーズはあります。そうしたニーズに応えるため、複数の小規模な副調整室を活用し、通常のテレビ中継の約5分の1のコストでコンテンツを制作しています。
IPの最大の利点は、副調整室内でシステムを柔軟に拡張できることです。近年では、ダークファイバーを使わなくても、既存のインターネット回線で高品質な映像を伝送できるようになりました。安価なエンコーダーを活用して、遠隔で制作できるシステムを構築したいと考えました。
N:現在、NETGEARスイッチはST 2110による接続に対応しつつ、ほかの伝送プロトコルにも対応しています。ST 2110を使うメリットをどのように見ていますか。
S: RTVではKAIROSを2系統運用しています。現場の要件に応じて入出力数を増やす必要がある場合、ST 2110であればSDIディストリビューターを使わずにマルチキャストできるため、ルーティングや分配がしやすくなります。今後は音声システムも含めて、ST 2110で運用できる別のシステムも構築していきたいと考えています。
M4350-16V4Cという選択は必然だった
N: ST 2110信号の伝送に、NETGEAR M4350-16V4Cスイッチを選ばれた理由を教えてください。
S: ST 2110対応製品は、これまで非常に高価でした。品質とコストのバランスを考えると、M4350-16V4Cはコストパフォーマンスに優れていると感じました。
もともとRTVではNETGEAR AVスイッチを導入していましたが、そのUIは非常に分かりやすいものでした。ネットワークエンジニアでないと設定が難しいスイッチもある中で、NETGEAR AVスイッチには効率的に運用できるよう設計されたプリセットが用意されています。映像業界とインターネット業界の間という微妙な立ち位置にいる私たちにとって、大変心強い存在です。
大手ネットワーク機器メーカーの製品は、仕様がオーバースペックだと感じることもありました。小規模から中規模の設備を構築する際、NETGEAR製品は性能とコストのバランスが非常に良いといえます。そのうえで、RTVにとって最も重要なのは、低コストを維持しながら、さまざまなシーンで使えるシステムを作ることです。そういった意味で、NETGEARスイッチは最適な選択でした。やりたいことが出てきたときに、設定変更に時間をかけることなく、その場ですぐに実現できるのです。
リモートプロダクションの追求に向けて
N: 今後、リモートプロダクションシステムはどのように発展していくとお考えですか。
S: 現在のリモートプロダクションというと、公道に設置したカメラを遠隔操作するイメージが一般的かと思います。これからは、専用の中継現場に依存しない映像制作やライブ配信、放送用映像制作が主流になっていくでしょう。将来的には、地方に放送副調整室を設けたり、さまざまな事業者との連携も可能になるはずです。通常であれば中継車で現場に向かう必要がありますが、IPで接続されていれば、複数の現場の案件を同時に受け持つこともできるでしょう。将来的には、実況や解説者が自宅から出演することも可能になります。こうした新しい働き方も推進していきたいと考えています。
N: そのような連携は、欧州などでは積極的に進められていますが、日本ではまだ具体的なメリットが見えにくい部分もあります。その点についてはどうお考えですか。
S: 放送局や制作会社が大規模な放送を行う場合は、現場に行ったほうが安心だと考えるのが一般的だと思います。しかし、私たちがフォーカスしているのは、小規模なイベントコンテンツを配信映像として展開していく領域です。その規模であれば、自宅のPCから映像を送ってもらい、ディレクターがそれを受けてスイッチングを行う、といったことも可能です。これが実現できれば、より高いコストパフォーマンスでの映像制作が行えるようになります。現在、そのような環境を実現するためのトライアルを進めているところです。
今後は、「この拠点ではスローモーション」「あちらの拠点ではCG」といったように、リモートプロダクションの副調整室の役割を分割していきたいと考えています。解説は別の拠点で担当し、解説収録を東京オフィスで行い、スイッチングやテロップ入れを大阪オフィスで行うといったイメージです。
拠点を分けて作業する場合、映像技術者がネットワーク設定を調整しなければなりません。その際のポイントは、自分たちの知識の範囲内で対応できるかどうかだと思います。拠点ごとに機器を選定する際には、メーカー側で機能面や設定をしっかり検証しているかどうかが非常に重要です。NETGEAR Pro AVやST 2110対応スイッチのように、操作性が高く扱いやすい機器である必要があります。そうすることで、新しいシステムやサービスの導入もしやすくなるはずです。
N: 最後に、RTVとしてのビジョンについてお聞かせください。
S: あらためてになりますが、世界的に見て必ずしもメジャーではないイベントであっても、ファンの皆さんに価値を感じていただけるような形で発信し、映像配信ビジネスとして成立させていくことが当社のビジョンです。これはスポーツに限らず、企業や自治体と一緒に手掛けるあらゆるプロジェクトに共通しています。
このビジョンを実現するためには、ライブ配信制作をよりシンプルかつ効率的なものにしていく必要があります。技術面では、現場常駐に依存しない手法を模索しながら、よりワクワクする映像を生み出せる手段を確立していきたいと考えています。
まとめ
欧州の放送局では、複数のリソースを集約してインターネットで接続し、1つの大きなシステムとして運用する手法がすでに実用段階にあります。一方、インターネット配信が伸びている日本では、中小規模の事業者同士が連携できるシステムに対するニーズが高まっています。
簡易なシステム構築のたびに、映像技術者がシステムインテグレーターに依頼するのは現実的ではありません。自分たちで構築したとしても、トラブルが発生した際に映像技術者だけで解決するのは難しい場面もあります。その点、NETGEAR AVスイッチには、あらかじめテスト済みの多数のプリセットが用意されているため心強い存在です。
AV over IPにおいて、ネットワークスイッチは「縁の下の力持ち」のような存在で、表に出てくることはほとんどありません。しかし、その基盤が堅牢でなければ、大きなトラブルにつながりかねません。リモートプロダクションの拡大に伴い、NETGEAR AVスイッチは「標準装備」としての存在感を高めつつあります。